ポーカー(テキサスホールデム)において、コール判断をするとき「ポットオッズは合わないけど、ヒットすれば大きく回収できそう」と感じる場面があります。
この記事では、インプライドオッズの意味・ポットオッズとの違い・計算方法・具体的な使い方・有効な条件と注意点を解説します。
インプライドオッズとは?
インプライドオッズ(Implied Odds)とは、現在のポットサイズだけでなく、今後のストリートで相手から追加で獲得できる見込み額を加味したオッズのことです。
通常のポットオッズは「今ポットにあるチップ」と「自分のコール額」だけで計算しますが、インプライドオッズでは「ドローが完成した場合に、ターンやリバーで相手からさらに引き出せるチップ」も考慮します。
つまり、「今は割に合わないコールでも、ヒットした後に十分なリターンが見込めるなら、長期的には利益的」という考え方がインプライドオッズの本質です。
ポットオッズとインプライドオッズの違い
この2つのオッズは似ているようで、判断の基準が大きく異なります。
| 比較項目 | ポットオッズ | インプライドオッズ |
|---|---|---|
| 計算に含む額 | 現在のポットのみ | 現在のポット+将来の獲得見込み額 |
| 最適な使用場面 | リバーでの最終コール判断 | フロップ・ターンでのドロー判断 |
| 正確性 | 数学的に正確 | 見込みに基づく推定値 |
| 難易度 | 計算が明確 | 相手のペイオフ傾向を読む必要がある |
リバーでは後のストリートが存在しないため、インプライドオッズはほぼゼロです。リバーでは純粋なポットオッズだけで判断します。一方、フロップやターンではまだストリートが残っているため、インプライドオッズが重要になります。
インプライドオッズの計算方法
インプライドオッズは厳密な公式というよりも、推定に基づく判断です。基本的な考え方は以下の通りです。
ステップ1:ポットオッズを計算する
まず通常のポットオッズを計算します。例えば、ポットが30BBで相手が15BBベットした場合:
- コール額:15BB
- コール後のポット:30BB+15BB+15BB=60BB
- 必要な勝率:15BB ÷ 60BB = 25%
ステップ2:ドローの完成確率を確認する
自分のドローが完成する確率を確認します。代表的なドローの確率は以下の通りです。
| ドローの種類 | アウツ数 | ターンで完成 | リバーまでに完成 |
|---|---|---|---|
| ガットショット | 4 | 約8.5% | 約17% |
| OESD | 8 | 約17% | 約32% |
| フラッシュドロー | 9 | 約19% | 約35% |
| フラッシュドロー+ガットショット | 12 | 約26% | 約45% |
ステップ3:インプライドオッズを加味して判断する
ポットオッズだけでは足りない場合、「ヒットした後に相手から追加で何BB引き出せるか」を見積もります。この見込み額を加えた総ポットで再計算し、ドローの完成確率を上回っていればコールは利益的です。
具体例:フラッシュドローのコール判断



















典型的なインプライドオッズの場面を見てみましょう。
状況
あなたはBTNで 9♥
8♥
を持っています。COがオープンレイズし、あなたがコール。フロップは以下の通りです。
ポットは30BBで、COが15BBをベットしました。あなたはフラッシュドロー(ハートが2枚)を持っており、9アウツ(残りのハート9枚)です。
ポットオッズの計算
- コール額:15BB
- コール後のポット:30BB+15BB+15BB=60BB
- 必要な勝率:15 ÷ 60 = 25%
- フラッシュドロー完成確率(ターンのみ):約19%
→ 19% < 25% なので、ポットオッズだけではコールできません。
インプライドオッズを加味
しかし、COのスタックはまだ50BB残っています。フラッシュが完成すれば、COはトップペアやオーバーペアで大きなベットをコールしてくれる可能性が高いでしょう。
追加で50BB獲得できると見積もった場合:
- コール額:15BB
- 期待総ポット:30BB+15BB+15BB+50BB=110BB
- 必要な勝率:15 ÷ 110 = 約14%
→ 19% > 14% なので、インプライドオッズを考慮すればコールは利益的です。
結果のシナリオ
- フラッシュが完成した場合:ターンやリバーでCOから追加のチップを獲得。ナッツフラッシュではないが、十分に強いフラッシュで大きなポットを取れる
- フラッシュが完成しなかった場合:ターンでブランクカードが落ちたら、COのベットに対してフォールドするか、リバーまでのオッズを再計算してコール判断をする
インプライドオッズが高い場面
インプライドオッズが高い(=ヒット後に大きく回収できる見込みがある)場面を把握することが重要です。
1. ディープスタック
相手のスタックが深い(残りチップが多い)ほど、ドロー完成後に引き出せる額が大きくなります。100BB以上のスタックがある場面では、インプライドオッズは非常に高くなります。
2. 相手が強いハンドを持っている可能性が高い
相手がオーバーペアやトップペア・トップキッカーを持っていそうな場合、ドローが完成してもペイオフ(大きなベットをコール)してくれる可能性が高いです。
3. 自分のドローが隠れている
例えば 5♠
4♦
でボードが 8♥
7♣
6♠
の場合、ストレートが完成していてもボード上からは見えにくいです。相手が警戒しにくいドローほどインプライドオッズは高くなります。
4. ナッツドローを持っている
A♥
5♥
でフラッシュドローを持っている場合、完成すればナッツフラッシュです。セカンドナッツ以下のフラッシュドローと比べて、完成後にスタックを全部入れても安心できるためインプライドオッズは最大化されます。
インプライドオッズが低い場面
1. ショートスタック
相手の残りチップが少ないと、ドローが完成しても回収できる額が限られます。20BB以下のスタック状況では、インプライドオッズよりポットオッズを重視しましょう。
2. ボードが怖い(ドロー完成がバレバレ)
例えば3枚目のフラッシュカードが落ちた場合、相手はフラッシュ完成を警戒してチェックやフォールドに回ることが多いです。ドローの完成がボード上から明らかな場合、ペイオフは期待しにくくなります。
3. 相手が上級者で降りられる
上級者はドロー完成を読んで正確にフォールドしてくるため、インプライドオッズが下がります。コーリングステーション(降りにくい相手)の方がインプライドオッズは高くなります。
4. ノンナッツドロー
フラッシュドローを持っていても、ナッツフラッシュでない場合は完成後に相手のより強いフラッシュに負ける可能性があります。この場合、ヒット後に大きなポットで負ける「リバースインプライドオッズ」のリスクがあります。
よくある間違い
- インプライドオッズを過大評価する:「ヒットすれば必ず相手のスタック全部もらえる」と楽観的に考えるのは危険です。現実的なペイオフ額を見積もりましょう
- ショートスタックでインプライドオッズを使う:残りチップが少ない場面では、回収額が限られるためインプライドオッズはほぼ機能しません。ポットオッズだけで判断すべきです
- マルチウェイでドローのインプライドオッズを過信する:複数人のポットでは、自分のドローが完成しても他の誰かがより強いハンドを持っている可能性があります
- リバーでインプライドオッズを考慮する:リバーの後にはストリートが残っていないため、インプライドオッズは存在しません。リバーのコール判断は純粋なポットオッズで行います
- ドロー以外でインプライドオッズを使う:ワンペア同士の対決など、大きく改善する見込みがないハンドではインプライドオッズの概念は当てはまりません
まとめ
インプライドオッズは、ポットオッズだけでは見えない「将来の利益」を考慮した判断基準です。特にフロップやターンでのドロー判断において、相手のスタック量・ペイオフの可能性・ドローの見えにくさを総合的に評価することが重要です。
ポットオッズとインプライドオッズを使い分けることで、ドローハンドの扱いが格段に正確になり、長期的な収益の向上につながります。